2025.10.30

大人の歯が生えてこなくて不安…先天性欠如歯について

「うちの子の歯、なかなか生え変わらないな…」
「永久歯が生えてこないのかも」と、不安に感じているお母さまへ。

実は、歯の生え変わりの時期や順番には個人差があり、
少し遅れても心配のいらないことが多くあります。

ただし、中には「先天性欠如歯(せんてんせいけつじょし)」といって、
生まれつき永久歯の芽が存在しないケースもあります。

この記事では、そうした「永久歯が生えてこない」お子さまの状態について、
わかりやすく基礎からご説明します。

原因や影響、早期に気づくためのチェックポイント、
そして成長期に合わせた治療やケアの方法まで、安心して理解できる内容をまとめました。

焦らず、まずは「知ること」からはじめてみましょう。

目次

先天性欠如歯とは?お子さまの歯が足りない状態の基礎知識

「永久歯が予定通りに生えてこない」というのは、
ただの生え変わりの遅れとは限りません。

中には、生まれつき永久歯の「芽(歯胚)」が存在しない
“先天性欠如歯”という状態が関係していることがあります。

まずは、「歯が生えてこない」とはどのような状態を指すのか、
基本の歯の本数と構造から見ていきましょう。

乳歯・永久歯の本数と「生えてこない」定義

子どもの歯の数には、実は明確な基準があります。
お口の中には、最初に生えてくる乳歯が20本、そして成長に合わせて生え変わる
永久歯が28本(親知らずを除く)あります。

通常、6歳頃から乳歯が抜け始め、12歳前後までに永久歯へと順番に生え変わります。

もしこの時期を過ぎても一部の歯が生えてこない、
あるいは片側だけ永久歯が見られない場合には、
何らかの理由で「歯の芽」が存在しない、
または萌出が遅れている可能性があります。

「生えてこない」と感じたとき、まず大切なのは
“まだ準備中なのか”それとも“そもそも芽がないのか”を見極めることです。

焦る必要はありませんが、年齢の目安を過ぎても歯が見られない場合は、
一度専門的にチェックしておくと安心です。

子どもに起こる先天性欠如歯の発生率と統計

お子さまの永久歯が生えてこない場合、「もしかしたらうちの子だけ?」
と不安に思う方も多いかと思います。

ですが、先天性欠如歯は決して珍しいことではありません。

日本を含む世界の複数の調査によると、お子さまの約10人に1人が、
1本以上の永久歯が先天的に欠けているといわれています。

つまり、クラスの中にも数名は同じような状況のお子さまがいる計算になります。

特に見られやすいのは、上の前歯のすぐ横にある「側切歯」や、
奥歯の手前に位置する「第二小臼歯」といった部位。

欠けている歯の本数や部位はお子さまによって異なり、
1本だけ欠けているケースもあれば、数本にわたる場合もあります。

見た目だけでは判断できないため、レントゲン検査での確認が必要です

欠損歯の部位によって、かみ合わせや見た目への影響も異なるため、
今後の治療方針を考えるうえでも「どの歯が欠けているのか」を正確に把握することが大切です。

大切なのは、早い段階でその状態を知り、お子さまの発育に合わせた適切なフォローを行うことです。

なぜお子さまの永久歯が生えてこないの?原因を知る

お子さまの歯がなかなか生えてこないと、
「栄養不足なのかな?」「何かの病気?」と心配されるお母さまも多いです。

実は、「永久歯が生えてこない」原因にはいくつかのタイプがあります。

代表的なのが、前述した歯の芽そのものが作られない「先天性欠如歯」です。

そのほかにも、歯はできているものの歯ぐきの下で止まってしまう
「萌出障害(ほうしゅつしょうがい)」や、
外傷・過剰歯(余分な歯)の影響で生えにくくなるケースもあります。

原因によって対処法も異なります。

ここでは、特に多く見られる先天性欠如歯のメカニズムや、
遺伝・環境要因との関係を順に解説していきます。

歯胚形成がそもそもないメカニズム

永久歯が生えてこない最大の原因は、
歯の「芽」にあたる歯胚(しはい)が、そもそも作られていないことです。

歯は、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときから、
あごの骨の中で少しずつ形づくられます。

このときに、乳歯の下には「次に生えてくる永久歯の芽(歯胚)」が
用意されるのですが、何らかの理由でこの芽が作られないと、
その歯は生えてくることができません。

歯胚が形成されない理由はまだ完全には解明されていませんが、
遺伝的な要素や、発育初期の環境的要因が関係していると考えられています。

つまり、「お母さんのせい」「生活習慣のせい」というものではなく、
発生の過程で自然に起こる“体の個性”の一つとして理解してよいでしょう。

このように歯胚が存在しない場合、いくら待っても歯ぐきから永久歯は出てきません。

早い段階で確認しておくことで、その後の生え変わりの管理や矯正治療の計画を立てやすくなります。

遺伝的な背景や家族歴の関係

先天性欠如歯には、遺伝的な要因も関わっていると考えられています。

実際に、「お父さんやお母さんも子どものころ永久歯が足りなかった」
「兄弟姉妹の中にも同じようなケースがある」といったご家庭は少なくありません。

歯の形成をつかさどる遺伝子には、数種類のパターンが知られています。

その中のいくつかが、歯胚の発達や形成に関係しており、
遺伝的な変化があると歯胚(特に側切歯や第二小臼歯)が
作られにくくなることがわかっています。

ただし、「親がそうだから必ず子どももそうなる」
という単純なものではありません。

遺伝はあくまで発生しやすさの傾向を示すものであり、
環境や発育のタイミングも複雑に影響します。

もしご家族に「歯が足りない」といわれた経験がある場合は、
お子さまの歯の生え変わりを少し意識して観察してあげてください。

環境・発育期の影響(栄養・薬剤・感染・外傷)

先天性欠如歯の原因には、遺伝的なものに加えて、
お子さまの発育期に影響を与える環境的な要素も関係していると考えられています。

たとえば、

  • 胎児期や乳幼児期の栄養状態
  • 薬剤の影響(抗生物質やホルモン剤など)
  • 高熱を伴う感染症
  • 転倒やぶつけるなどの外傷による刺激

といった要因が、歯の形成期に影響を及ぼすことがあります。

歯は、顎の中で時間をかけて作られていくため、
その過程で体の調子が大きく乱れたり、発育に関係するホルモンバランスが変化したりすると、
歯胚の成長に影響が出る場合があります。

ただし、これらの要因があっても、必ず歯が欠けるわけではありません。

多くの場合、複数の要素が重なったときに
歯胚形成がうまくいかなくなると考えられています。

お母さまにとって大切なのは、「何かが悪かったから欠けた」というよりも、
お子さまの今の状態を正確に知り、これからどうサポートしていくかを考えることです。

環境的な要因が関係していても、早期に発見し適切に対応することで、
成長や咬み合わせに大きな影響を残さずにすむケースが多くあります。

放置するとどうなる?お子さまの将来に及ぼす影響

永久歯が生えてこないまま放置してしまうと、見た目の問題だけでなく、
お口の機能や成長バランスにも影響が出ることがあります。

一時的には「乳歯が残っているから大丈夫」と感じても、
長い目で見ると、歯列全体のバランスにさまざまな変化が起こる可能性があります。

たとえば、乳歯が長く残ることで虫歯や歯ぐきのトラブルが増えたり、
歯の足りない部分に隣の歯が倒れ込んで歯並びが乱れたりすることがあります。

さらに、前歯が欠けている場合は発音や見た目の印象にも影響し、
成長期のお子さまの顎の発達や心理面にも関わることがあります。

ここからは、放置した場合に考えられる具体的な影響を、順に詳しく見ていきましょう。

乳歯が残るケースとそのリスク

永久歯が欠如している場合、その下から次の歯が生えてこないため、
乳歯が長く残ることがあります。

一見すると「まだ抜けないだけかな?」と感じるかもしれませんが、
乳歯は永久歯と比べて構造的に弱く、長期間の使用には向いていません。

乳歯は根が短く、エナメル質(歯の表面の硬い層)も薄いため、

  • 虫歯になりやすい
  • 歯がぐらつきやすい
  • 噛む力に耐えきれず、欠けてしまうことがある
    といったリスクがあります。

また、乳歯が早く抜けてしまうと、その空いたスペースに隣の歯が移動し、
本来の歯並びのバランスが崩れる原因にもなります。

見た目には問題がないように見えても、放置することで将来的に
咬み合わせのズレや歯列不正を引き起こす可能性があるのです。

そのため、乳歯が長く残っている場合には、「いつ、どんな状態で抜けるのか」
「その後どうスペースを保つか」を歯科医院でしっかり管理していくことが大切です。

隣接歯の移動・スペースの喪失・歯並びの乱れ

永久歯が生えてこないまま放置していると、
その空いたスペースを埋めるように隣の歯が動いてしまうことがあります。

一見すると自然な変化のようですが、これが後々の歯並びや咬み合わせに
大きな影響を及ぼすことがあります。

たとえば、

  • 歯のない部分に隣接歯が倒れ込む
  • 反対側の歯が伸び出してくる(挺出)
  • 奥歯の噛み合わせの高さが変化する

といった現象が起こり、結果として上下の噛み合わせがずれたり、
前歯がすき間だらけになったりすることもあります。

さらに、歯の位置が変わると顎の成長バランスにも影響します。

片側だけで噛む「片噛み」の癖がつくと、顔の筋肉の発達に左右差が出たり、
顎関節に負担がかかったりすることもあります。

こうした変化は、初期のうちは痛みや見た目の違和感が少ないため、
気づかないうちに進行してしまうのが特徴です。

そのため、永久歯が生えてこない部分のスペースは、
矯正や装置を使って適切に管理することが大切です。

成長期のうちにスペースを守っておくことで、
将来的に補綴治療(ブリッジ・インプラントなど)が必要になった場合でも、
負担の少ない治療が選択できます。

発音・見た目・顎の発育に与える影響

永久歯の欠如は、単に「歯が足りない」というだけでなく、
お子さまの成長や自信にも関わる大切な要素です。

まず、前歯の欠如がある場合に起こりやすいのが発音のしづらさです。

「さ行」や「た行」など、舌と歯の位置関係が大切な発音では、
歯がない部分から空気が漏れてうまく音が出にくくなることがあります。

特に学校で音読や発表をする年齢になると、こうした発音の違いを
気にするお子さまも少なくありません。

また、見た目の面でも影響は大きく、前歯の隙間や非対称な歯列は、
笑顔や表情に自信を持てなくなるきっかけになることがあります。

お口まわりの筋肉や顎の発育は、噛む・話す・笑うといった
日常動作によって発達していくため、歯列の不均衡は
顎の成長バランスにも影響することがあります。

こうした見た目や発音の課題は、
早めに気づいて適切な治療を受けることで改善できることが多いです。

当院では、矯正や補綴(ほてつ)を組み合わせて
「見た目」「噛む力」「話す力」のすべてをバランスよく整える治療計画を考えます。

お子さまが笑顔で成長していくためにも、
「歯が足りない」という現実を必要以上に悲観せず、
今できるサポートを前向きに考えていきましょう。

お母さまがすぐできる!早期発見のチェックポイント

永久歯の欠如は、痛みや腫れのようにすぐ気づける症状がないため、
「なんとなく生え変わりが遅いな」という日常の違和感が発見のきっかけになります。

実際、早期に気づけるかどうかは、親御様のちょっとした観察力によるところが大きいです。

「まだ乳歯が抜けない」「左右で生え方が違う」など、
小さな変化に気づいたときに早めに歯科医院で確認しておくと、
先天性欠如歯をはじめとした発育上の問題を早い段階で把握できます。

この章では、

  • ご家庭で見つけやすい“気になるサイン”
  • 歯科医院で行う確認方法
  • 普段から意識しておきたいケアのポイント

を順にご紹介します。

お母さまの「ちょっと気になる」が、
お子さまの健やかな口の成長を守る第一歩になります。

乳歯が抜けない/永久歯がなかなか生えてこないというサイン

お子さまの歯の生え変わりには個人差がありますが、
「目安の時期を過ぎても乳歯が抜けない」
「片側だけ永久歯が生えてこない」場合は、少し注意が必要かもしれません。

一般的な永久歯の生え変わり時期は次のとおりです:

  • 前歯(中切歯・側切歯):6〜8歳ごろ
  • 奥歯(第一大臼歯・小臼歯):9〜12歳ごろ
  • 犬歯:10〜12歳ごろ

この時期を過ぎても片側の歯だけ生えてこない、あるいは乳歯がぐらつかずに残っている場合は、
永久歯の歯胚が存在しない、もしくは萌出(ほうしゅつ)が遅れている可能性があります。

また、歯の並びに左右差があるときも、チェックのきっかけになります。

たとえば「右の前歯は生えたのに左はまだ乳歯のまま」といった場合、
左右で歯の発育に違いがあることが考えられます。

こうしたサインを見つけたときに焦る必要はありませんが、
自己判断せず一度レントゲンで確認することをおすすめします。

早い段階で状況を把握しておくことで、必要に応じてスペースを確保したり、
将来の矯正をスムーズに行えたりと、成長に合わせた対応がしやすくなります。

レントゲン撮影(パノラマX線)で歯胚を確認する重要性

永久歯が生えてこない原因を調べるうえで、
もっとも確実な方法がレントゲン検査(パノラマX線)です。

お口全体を一度に写すことで、目では見えないあごの中の状態や、
永久歯の「芽(歯胚)」が存在するかどうかを確認することができます。

レントゲンを撮影すると、乳歯の下に永久歯の歯胚がはっきりと映ります。
もしその位置に歯胚が確認できない場合は、「先天性欠如歯」の可能性が高いと判断できます。

一方で、歯胚が存在していても生える位置がずれていたり、
周囲の骨が厚くて萌出が遅れていたりすることもあるため、
歯科医師がそれぞれの状況を慎重に見極めます。

パノラマX線は放射線量がごく少なく、お子さまにも安全に実施できる検査です。
痛みもなく短時間で終わるため、
「生えてこない理由を確かめたい」ときの第一歩として最も有効な方法です。

この検査結果をもとに、「経過観察でよいのか」
「矯正などの介入が必要か」といった判断を行うことができます。

つまり、レントゲン撮影は不安を解消し、
正しい対策へつなげるための大切なチェックポイントなのです。

保護者としてできる予防的ケア・定期検診のすすめ

永久歯の欠如や生え変わりの遅れは、
早期に気づくことでその後のケアや治療方針を大きく変えることができます。

そのために大切なのが、定期的な歯科検診と日常のちょっとした観察習慣です。

まず、ご家庭でできることは「歯の生え方を観察する」こと。

乳歯が抜けたあと、どのくらいで永久歯が顔を出すかを意識して見てあげましょう。
また、左右の歯の生え方に差がないか、
ぐらぐらしている乳歯が長期間残っていないかをチェックします。

歯科医院での定期検診では、

  • 歯の生え変わりの進行状況
  • 噛み合わせや顎の成長バランス
  • 永久歯の歯胚の有無(必要に応じてレントゲン確認)

といった点を総合的に見てもらうことができます。

特にお子さまの成長期は、半年〜1年ごとにお口の中の状態が変化します。

「何も問題がない」時期から定期的に通うことで、
異変を早く発見し、治療や予防をスムーズに行うことができるのです。

永久歯の欠如があっても、早めに状態を把握していれば、
矯正や補綴(ほてつ)などの将来的な選択肢をお子さまの成長に合わせて計画できます。

小さなサインを見逃さず、歯科医院との継続的な連携を心がけましょう。

お子さまのための治療・ケアの選択肢と当院の方針

永久歯の欠如が確認された場合でも、すぐに治療を始める必要があるとは限りません。
大切なのは、お子さまの成長段階に合わせた“見守りと計画的なケア”です。

永久歯の本数や位置、顎の発育スピードは一人ひとり異なります。

そのため、焦って治療を進めるのではなく、成長とともに「どのタイミングで」
「どんな方法で」整えていくのが適切かを考えます。

当院では、

  • 将来の歯並びや噛み合わせのバランス
  • 見た目の自然さ
  • 乳歯や残存歯の健康維持

といった複数の観点から、長期的なサポートを行っています。

お子さま本人が安心して治療を受けられるよう、痛みや不安を最小限にしながら、
一緒に成長を見守る体制を整えています。

ここからは、治療の具体的な選択肢について見ていきましょう。

矯正治療によるスペース管理・歯列整備

永久歯が欠如している場合、まず考えられるのが
「矯正によるスペースのコントロール」です。

欠如している部位をそのままにしておくと、隣の歯が倒れ込んだり、
噛み合わせのズレが起きたりと、歯列全体に影響が出ることがあります。

矯正治療では、お子さまの年齢や歯の生え変わり状況を見ながら、
次のような方針をとることが多いです。

・スペースを閉じる方法
 欠如している部分のすき間を矯正で整え、全体の歯並びを自然に見せる方法です。
 見た目がすっきりし、将来的に人工歯を入れる必要がない場合もあります。

・スペースを保つ方法
 将来、成長が落ち着いた段階でブリッジやインプラントなどを検討する場合、
 今はその「場所」を確保しておく治療を行います。

このように矯正は、見た目の美しさだけでなく、
かみ合わせや機能を守るための大切な準備段階でもあります。

また、お子さまの骨や歯の動きやすさを生かせるのも成長期ならでは。
痛みの少ない装置を使いながら、将来の噛み合わせを整えるようサポートします。

補綴・将来のインプラント/ブリッジを見据えた対応

永久歯が欠如している場合、成長期の間は矯正でスペースを保ちながら、
将来の補綴(ほてつ)治療を見据えた計画を立てることことも。

補綴とは、歯を失った部分を人工の歯で補う治療のこと。
大人になって顎の成長が止まってからは、次のような方法が選択肢になります。

ブリッジ
 欠如部の両隣の歯を支えにして、橋のように人工歯を固定する治療。
 自然な見た目と安定した噛み合わせが得られます。

インプラント
 骨の中に人工の根(チタン製)を埋め込み、その上に人工歯を装着する方法。
 周囲の歯に負担をかけず、しっかり噛めるのが特徴です。

どちらの方法を選ぶにしても、お子さまの骨の成長が安定してからでないと行えません。

そのため、小児期のうちは「今はどう育てていくか」を中心に考えることが大切です。

将来的にスムーズに補綴治療へ移行できるよう、長期的な視点でサポートを行っています。

乳歯をなるべく長く使う・その維持管理方法

永久歯が欠如している場合、その部分に対応する乳歯が長く残っているケースがよくあります。

この乳歯をできるだけ長持ちさせることが、
お子さまの歯並びや噛み合わせを安定させるうえで非常に重要です。

乳歯は永久歯に比べて歯の根が短く、エナメル質や象牙質も薄いため、
虫歯になりやすく、摩耗しやすいという特徴があります。

そのため、次のようなケアを心がけることがポイントです。

  • 丁寧なブラッシング
    特に歯と歯の間や歯ぐきとの境目を意識して磨きましょう。仕上げ磨きも欠かせません。
  • 定期的なプロフェッショナルクリーニング
    歯科医院でのフッ素塗布やクリーニングにより、乳歯の表面を強化し、虫歯の発生を防ぎます。
  • 噛み合わせ・揺れのチェック
    乳歯がぐらついたり、噛むと痛みが出たりした場合は、早めに受診を。
    早期に調整することで、長く機能させることができます。

当院では、残存乳歯を単に「様子を見る」だけでなく、
積極的に守り育てるケアを重視しています。

お子さまが自分の歯でしっかり噛めるよう、
成長に合わせたメンテナンスを一緒に続けていきましょう。

お家でできる予防・長期フォローのポイント

永久歯の欠如が見つかったあとも、日々のケアや観察によって
お口の健康をしっかり守ることができます。

乳歯が長く残る場合や矯正を進めている場合でも、
家庭でのちょっとした意識でトラブルを防ぐことができます。

お子さまの成長に合わせて、保護者と歯科医院が二人三脚でフォローしていくことが理想的です。

ここからは、お家でできるケアと観察のポイントを3つに分けてご紹介します。

虫歯・歯周病リスクが高まる乳歯のケア強化

永久歯が欠如して乳歯が長く残る場合、
乳歯を健康に保つことがそのままお口全体の健康維持につながります。

しかし乳歯は永久歯に比べて構造がやわらかく、虫歯が進行しやすいため、
より丁寧なケアが必要です。

特に注意したいのは次のポイントです。

☑️仕上げ磨きの継続
 小学生になっても、奥歯や歯と歯の間は磨き残しが出やすい部分です。
 寝る前だけでも保護者による仕上げ磨きを続けましょう。

☑️フッ素の活用
 家庭用フッ素ジェルや歯科医院でのフッ素塗布を定期的に行うことで、
歯の再石灰化を促し、虫歯になりにくい状態を保ちます。

☑️食習慣の見直し
 間食の回数や時間、糖分の摂取量を意識するだけでも、虫歯リスクはぐっと減らせます。
 甘いお菓子やジュースを摂るときは、時間を決めて摂取し、その後にうがいや歯みがきを。

また、乳歯が長く使われると歯ぐきの炎症(乳歯性歯周炎)を起こすこともあります。
歯ぐきが赤く腫れていたり、出血がある場合は早めに受診しましょう。

当院では、乳歯が残るお子さまのために、虫歯予防と歯肉ケアの両面からサポートしています。

痛みが出る前に、定期的なチェックで健やかな口内環境を保ちましょう。

噛み合わせ・顎の発育を観察する習慣

永久歯の欠如がある場合、噛み合わせのバランスや顎の成長に影響が出ることがあります。

歯が足りない部分にかかる力の負担が偏ることで、
反対側の歯が伸びてきたり、歯列がずれて噛み合わせが浅くなることもあります。

そのため、ご家庭でできる「観察の習慣」がとても大切です。
次のようなサインがないか、普段の生活の中でチェックしてみましょう。

  • 片方の歯ばかりで噛んでいる(片噛み)
  • 口を閉じるときに力が入っている、あるいは口が閉じにくそう
  • 食事中に顎を動かす方向が左右どちらかに偏っている
  • 寝ているときに歯ぎしりや食いしばりがある

これらのサインがある場合、噛み合わせのバランスや顎の筋肉の使い方に
偏りがある可能性があります。

放置すると、顎の成長に左右差が出たり、歯並びがさらに乱れたりすることも。

定期的に顎の成長や噛み合わせの状態を確認し、
必要に応じて口周りの筋肉のバランスを整え、
口腔習癖(口周りの癖)を改善する予防矯正と言われる治療を行う場合も。

お家では、「左右均等に噛む意識」や
「柔らかいものばかりでなく、噛み応えのある食材も取り入れる」ことを心がけてください。

日常のちょっとした習慣が、健やかな顎の成長を支えてくれます。

見た目・心理面にも配慮した子どもの口元ケア

永久歯が生えてこない、または歯の数が少ないという状況は、
見た目や気持ちの面でもお子さまに影響を与えることがあります。

特に前歯の欠如や歯並びの不揃いは、笑顔に自信を持てなくなったり、
友達との会話や写真撮影をためらってしまうこともあります。

こうしたときに大切なのは、「見た目を整えるケア」と同時に、
「気持ちに寄り添うサポート」です。

まず、歯の見た目については、

また、お子さま自身が「自分の歯を大切にしよう」と思えるように、
歯みがきを褒める、通院を怖がらせない、歯医者さんとの会話を楽しいものにする
——といった前向きな関わりがとても大切です。

当院では、治療だけでなく「お子さまが自分の口を好きになるサポート」を重視しています。

見た目・機能・こころのバランスを大切に、保護者の方と一緒にお子さまの笑顔を育てていくサポートをさせていただければと思います。

まとめ:焦らず、知ることから始めましょう

お子さまの永久歯がなかなか生えてこないと気づいたとき、
まず大切なのは「焦らず、原因を知ること」です。

「先天性欠如歯(せんてんせいけつじょし)」が原因の場合でも、
早期発見と適切な検査・経過観察によって、成長期のうちからしっかりと対応することが可能です。

レントゲンを撮り、歯胚の有無や顎の成長バランスを確認することで、
将来的な治療方針を安心して立てられます。

当院では、矯正治療、補綴治療を通じ
お子さまの見た目・機能・発育に配慮した包括的なケアを大切にしています。

乳歯のケアや噛み合わせの観察など、今できることから少しずつ始めていきましょう。

もし「永久歯が生えてこない」「乳歯が抜けない」といった心配がありましたら、
どうぞ一人で悩まず、気軽にご相談ください。

🌼 まずは検診にお越しください。
お口の状態や成長に合わせた検査・治療計画を丁寧にご説明させていただきます。